History of Trombone
ここではトロンボーンの歴史を簡単に解説しています。現在のところ単一のページですが将来的には文章中の話にリンクさせていこうと考えています。

 
トロンボーンがどこで生まれたのかは知られてはいませんか、最も古い制作者の記録は金管楽器で名高いハンス・ノイシェル2世となっています。
 彼はマクシミリアン1世のために楽器を製作しました。ノイシェルの肖像は王が1,512年に命じて作らせた版画、『マクシンミリアン皇帝の凱旋』(1,526年)の中に、王の特別の希望で描かれています。
 ノイシェル2世の息子のゲオルク・ノイシェルによって1,557年に作られたテノールトロンボーンは、現在ウィーンのルネ・クレメンスィス氏の所蔵になっています。
 トロンボーンはルネサンス、バロックの他の楽器と同様に種々の大きさで作られました。アルト、テノール・ベースおよびコントラベースの4種類はプレトリウスによって知られていましたが、ソプラノトロンボーンも18世紀には使われました。
 テノールのB♭管は最もよく使われましたし、現在もそうですが、通常Gまで下がることができます。これに対してコントラベースは1オクターブ下でした。
 プレトリウスは、「注意深く演奏すればさらに低い音を出すことができたし、時には他の大きさの楽器として使用するために差し替え管がつけられた。」と述べています。
 トロンボーンはスライドによって管の長さを7種類に変えることができますので、半音階的な曲の演奏は問題なくできますが,初期の頃にはこの楽器は教会音楽で、特にコルネットと一緒に広く用いられました。また折りに触れて、オペラでも特別な効果のために使用され、代表的な例としては、モンテヴェルディの『オルフェオ』(1,607年)があげられます。  
 1,740年ころに、より力強い音を出すためにベルが広げられましたが、そのころすでにこの楽器はヨーロッパの多くの地域で好まれなくなってきており、イギリスではトロンボーン奏者は長い間王室の個人的な楽団の中に見られたにすぎませんでした。けれどもドイツとオーストリアでは反対に、グルックの『オルフェオ』(1,762年)、モーツァルトの『魔笛』(1,791年)およびハイドンの『天地創造』(1,798年)など有名な劇文学を題材とする音楽の中に入りながら大いに演奏され、ゲオルク・ヴァーゲンサイル(Georg Wagenseil,1715〜77年)は最も初期のトロンボーン協奏曲のひとつを書きました。
 ベートーベンが交響曲第5、第6及び第9番にアルト,テノール,ベースのトロンボーンを使用して以来、この楽器は次第にオーケストラの中に)とした地位を築き始め、初めは旋律よりもむしろ和音のために用いられていました。
 後になってアルトトロンボーンは高音域を演奏する2本めのテノールトロンボーンによって置き換えられました。コントラベイストロンボーンはワーグナーの『ニーベルングの指輪』のために要求されたもので、現在も時折他の作品に用いられています。1,830年ころにはバルブがつけられたトロンボーンもつくられましたが、これらは行進の際に演奏しやすいことから、主として軍隊隊の中で使用されるようになりました。
 現在ほとんどのオーケストラのトロンボーン奏者は、伝統的な楽器の方を好んで使っています。

  
楽器のおいたち  著 メアリ・レムナント 訳 郡司 すみ
  (株)日貿出版社  P198〜200